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中日版「星逢一夜」は単なる再演ではない!

大ヒット作となった「星逢一夜」がいずれ再演されるであろう作品であることは、誰しも予感していたことだと思います。しかし、同一キャストですぐに再演されるとは、予想以上の早さでした。

そして、この再演がすごいのは、単なる再演ではないということです。
細かい設定や役回りを変更し、まるで初めて見る作品のような感覚が得られる再演となりました。

演出の上田久美子先生は、歌劇2017年2月号のインタビューにて、「前回まで戻すというより、皆が新しい作品としてもう一度好奇心を持てるかが大事」と述べています。

出典:©宝塚歌劇団
雪組公演『星逢一夜』『La Esmeralda』演出家インタビュー(youtube) より

また、早霧せいなさんの「人間の善なる部分や優しい部分を嘘無く演じられる」という本質から「大人になった晴興野部分も、早霧の持ち味に寄せて演出できれば」と語っています。

では、具体的にどのような違いが生まれているのでしょうか?

中日版「星逢一夜」の変更点

※この項では、物語の核や結末についても触れるので、気になる方はご注意ください※


物語で大きく変わったのは「晴興の位置づけ」と「一揆の結末」でしょう。

<晴興の位置づけ>
初演での晴興は、「幕府の改革を推し進める、強引さを持つ老中」として描かれていましたが、再演時は「改革をすすめる老中の1人」として描かれています。

熊本藩主で晴興のライバル・細川慶勝(初演:月城かなと、再演:煌羽レオ)の百姓の命を思う台詞が晴興の台詞に変更されていたり、徳川吉宗の台詞が追加されていたりと、”百姓の気持ちが分かる、優しい老中”という位置づけになっていました。

これにより、百姓と幕府の仕事の間で板挟みになる晴興の苦悩がより強調されたと考えられます。

<一揆の結末>
源太をはじめとする百姓たちの一揆は鎮圧され、晴興は農民たちを救う代わりに陸奥へと永蟄居されます。この救いのないような結末と、源太・泉との別れが観るものの涙を誘います。

再演版では、晴興の永蟄居と引き換えに「今回のみ年貢を半分とする」という沙汰が追加されました。
悲劇であることに変わりはありませんが、源太の死も晴興の苦悩もきちんと意味があったのだということが感じられ、少しだけ救いが加えられたのです。

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