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5.作り手の愛とこだわりを感じる作品

今や一大ブームになっているガルパンも、企画当初は様々なドラマがありました。

制作会社アクタスの社長兼アニメーションプロデューサーでもある丸山俊平さんは、現在は親会社となったバンダイビジュアルの湯川淳さんに声をかけるも、当時まだアクタスが知名度がなかったためになかなかOKをもらえず「旬なクリエイターを一人連れてきてくれたら」という条件のもとイラストレーターの島田フミカネさんを紹介してもらいやっとOKをもらうことができたのだとか。

題材が戦車と決まってからも、外野からは「これは無理」「アニメに向いていない」という心無い言葉を浴びせられましたが、「これがアクタスと自分にとっての最後の作品」と背水の陣で臨み、その気持に応えるかたちで、水島努監督(侵略!イカ娘、クレヨンしんちゃん劇場版シリーズなど)や脚本家の吉田玲子さん(けいおん!、バクマン。など)の参加が決定したのです。
ガルパン出典:©「ガールズ&パンツァー」公式ツイッター(@garupan)より
プロデューサーの杉山潔さんはもともと航空・軍事に造詣が深く、戦車を題材とし物語の内容から舞台を茨城県大洗町に設定しました。

実在の町に設定したのは、作品の世界観がファンタジーに寄っているため舞台は現実味をもたせるためにどこかの町の風景・習慣・食べ物などを取り入れて、リアリティーやキャラクターの存在感を地に足の付いたものにしたいと考えたためです。

もともと茨城県に在住していた杉山さんは、アニメの背景としても目につく展望台やモールなどの大きな施設もあり、学園艦も入港のできる港町ということで、大洗町を水島監督に提案しすぐに決定したそうですよ。


こうして良いチームで制作がスタートするも放送開始前のファンからの期待値は低く、プロデューサー自らがビラ配りするも散々な結果に・・・。


しかし、スタッフ・キャスト、チーム一丸となって臨んだ制作陣の努力をアニメファンはしっかりと作品に感じ取っていました。

アニメファンの口コミでガルパンの人気はどんどん上がっていき、劇場版作品の制作に続いていったのです。


戦車と一から向き合い手間を惜しまずに何度もブラッシュアップを重ね、完成度をあげようと改良を続けた3D監督の柳野啓一郎さん。

女子高生の日常のなかに"非日常"の戦車の戦闘をスポ根アニメのように落とし込んだ脚本の吉田玲子さん。

「爆音上映」等、劇場版アニメ作品の可能性を広げ、劇場版のロングヒットに貢献した音響監督の岩浪美和さん。

「この作品が声優人生の最後の作品」と心に決めオーディションに臨んだ主人公の西住みほを演じた渕上舞さん。

ほかにもここでは紹介しきれないたくさんの「作り手たちの全力」が、作品の大ヒットに繋がったのですね。


キャラクター、ミリタリー設定、名セリフはもちろん、世界観にまつわる用語や、戦車に纏わる史実、さらには格言まで網羅した大事典『改訂版 ガールズ&パンツァー エンサイクロペディア』なるものも存在していて、ガールズ&パンツァーの制作陣が、細部にいたるまでこだわっているからこそ生まれた本なのだと、改めてこの作品の奥行きに驚かされました。

解説本やコメンタリーも他作品に比べて多く存在しているので、どこまでも深掘りできるというのはオタク気質な人が多いこの作品のファン層にもマッチしていますね。


観る人によっては、そんなこだわり気付いていないかもしれない。それでもやるからには誰が観ても納得できる、喜んでくれるものを作りたい。

そんな作り手たちの情熱をさまざまなところで感じることができるのも『ガルパン』が愛され続ける魅力であると感じました。



そして作品のヒットにあわせて聖地となった大洗町もアニメ放送が終了した現在も年々盛り上がりをみせています。

今年で21回目の開催となった「あんこう祭り」にはおよそ13万人もの来場者が訪れ、その数は年々増加傾向。

アニメのヒットとは言え、大洗の人気はファンを呼び込む大洗の町の人々の取り組みによるところが大きく、ガルパンきっかけで最初は町に来てみたけれど、町の人々の活気と温かさに何度も訪れるようになったという方も少なくないそうです。

実は、杉山プロデューサーと大洗にあるとんかつ屋兼Oaraiクリエイティブマネジメント社長の常盤良彦さんは「このアニメで最初から町を巻き込むことはしない」と約束していたのだとか。

作品のなかで町中を戦車で壊していく設定はもちろん、ガルパンが成功するかどうかわからないという部分も大きかったと杉山プロデューサーは語ります。

舞台になっているとはいえ「大洗」という単語が登場する回数は少なく、TVシリーズでも町中が登場したのは4話から。作中でも大洗の町をアピールしている描写はなく、キャラクター達が住人として自然に町に存在しているような描かれ方をしていました。
ガルパン出典:©「ガールズ&パンツァー」公式ツイッター(@garupan)より
それでも常盤さんは、町のことがわからない制作チームのために町のマップやタイムスケジュールを作ったり、営業マン時代のプレゼン能力を生かして、商店街や鉄道会社に資料を持っていったりと大洗の町の束ね、アニメの制作準備に貢献し、まちぐるみの様々な企画の発端者として街を盛り上げていったのです。

町内にはキャラクターのパネルを店頭に立てているお店が多く、これらをファンにさがしてもらう「ガルパン街なかかくれんぼ」というイベントがありました。

実はこれは商工会が発案したイベントで、このパネルをきっかけにファンとのコミュニケーションがよりできるようになったそうです。

また、大洗では、町のいたるところにガルパンのオリジナルグッズを販売している店舗がありますが、そのほとんどの商品がロイヤリティーが乗っていないような金額で販売されています。

ガルパンファンのコアな層である30代前後のファンは、原価にも理解のある世代のため、彼ら(大洗の人々)はこの作品で儲けようとする気持ちがないのかな?と町への理解を深めていったようですね。

大洗町はもともと海水浴場があり、年間を通してのイベントも多く、大きな水族館や展望台などの施設もある「観光地」。だからこそお客さんとの交流にも慣れているしホスピタリティも高く、お客さんを喜ばせたり楽しませたりする力がもともと大きかったのです。

経済効果を度外視して、「ガルパンって面白いよね!」「ファンがもっと楽しんでくれることをやってみようよ!」と自分たちでどんどん動いていく人々が多いから、ファンも安心して通えて"大洗町のファン"になっていくのかもしれません。

そして多くの観光客が訪れるようになった今でも、大きなイベントでファンが大勢来てもゴミが落ちないのだとか。

きっと自分たちの行動によって『やっぱりアニメファンは……』と思われてしまう可能性があることをすごく自覚しているファンが多くて、町の人たちが色々してくれているのに、自分たちの行動でそれを台無しにしてはいけないという優しい方が多いのでしょう。大洗の町とファンとのあたたかい信頼関係が築けていることを実感します。

先述したキャラクターパネルの置いてある店舗では、そのキャラクターに纏わるグッズなどのファンの置き土産がたくさん置かれています。アニメ聖地となった街では、パネルやポスター、グッズなどが置かれることは決して珍しいことではないのですが、その店舗数や量が尋常じゃないことからも数多くのファンが繰り返し大洗の町に足を運んでいるのが伺えますね。

大洗町は、大洗駅やシーサイドステーションにあるガルパンギャラリーを筆頭に展示も多く、作中にリアルに描かれた大洗の町並みをそのまま体感することもできますし、単純な聖地巡礼だけではなく、古き良き老舗店舗でリーズナブルに大洗の絶品グルメを堪能することもできます。

まだ行かれたことのないという方も是非一度、大洗町に遊びに行ってみてくださいね♪

『ガルパンはいいぞ』それぞれの度合いでガルパンを楽しもう♪

ガルパン出典:©「ガールズ&パンツァー」公式ツイッター(@garupan)より
今回は、劇場版最終章の公開がはじまったばかりの『ガールズ&パンツァー』についてご紹介してきました。

『戦車』というインパクトの強い題材ですが、じつは王道をゆく青春アニメで「観る人を選ばない」万人受けするアニメ作品かもしれませんね。

もちろん今回ご紹介したのはあくまで作品の魅力の一部であり、人それぞれにこの作品にハマる理由があり、「ここが好き」というポイントがあったからこそ、ここまで多くのファンに絶賛され続けているのだと思います。


好きなものを追求したくなるアニメオタクやミリタリーオタク、映画オタクなどコアな層はもちろん、ライトな層のファンでも「それぞれの度合い」で楽しむことができるところもこの作品の魅力ではないでしょうか。

もし、まだ一度も観たことないという方でもアニメシリーズや劇場版を観て「ガルパン、私に合っているかも」と感じたのなら、ぜひ繰り返し観てみてください。

何度も観ることによって、細かい演出によるキャラクターそれぞれの個性をより見出すことができます。

戦車やその時代背景に興味を持ったのなら、戦車や各学校のモチーフになった国の軍の史実を知ることでさらに物語の深みを増すことができます。

素晴らしい音楽や音響に興味を持ったのなら、色々な劇場に足を運び聞き比べをして楽しむのもいいかも。

作品をつくりあげてきたスタッフ陣のことに興味を持ったのなら、インタビューはもちろん様々な雑誌などで多くのこだわりを語ってくれているので読んでみるのもいいですね。

もっとガルパンの世界に浸りたいなら、舞台聖地・大洗町に遊びに行くのも良いでしょう。

ガルパン出典:©「ガールズ&パンツァー」公式ツイッター(@garupan)より
現在公開中の『ガールズ&パンツァー最終章』は全6話の上映が決定していて、12月9日から第1話が公開されたばかり。そして第2話上映開始後からは2話づつ続けて上映する4DX・MX4Dの上映も予定されています。

冬休みをつかってアニメシリーズ全13話とOVA1話、前作の劇場版1作品を観てから、最終章を観るというのも良いかもしれませんね!

一アニメとして楽しむこともよし、唯一無二のお気に入りアニメとして楽しむもよし。まだまだその盛り上がりが衰えない『ガールズ&パンツァー』。ぜひ、あなたらしい楽しみ方でガルパンを楽しんでみては♪

※記事初出時に、本文に事実と異なる記述がありました。訂正してお詫びいたします。

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