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アニメ史に激震!映画「この世界の片隅に」はなぜこれほどまでに絶賛されるのか?

2016年11月より公開がスタートした片渕須直監督のアニメーション映画「この世界の片隅に」。

この世界の片隅に <出典:konosekai.jp>

昭和20年ごろの広島と呉を描いた本作品は、当初は小規模での公開だったにもかかわらず観客動員数が右肩上がり。ツイッターなどのSNSで“絶賛”の口コミが拡散され公開劇場も増え続け、多くの映画評論家からも高く評価されています。


なぜ「この世界の片隅に」はこんなにも人々の心をつかむのか、今回はその魅力に迫ります!


日常的な風景”から世界の美しさと残酷さを訴える


この世界の片隅に <出典:konosekai.jp>

物語の舞台である昭和の日本を、やわらかいタッチの優しい世界観で描いています。

主人公「すず」は広島で生まれ、呉の北条周作のもとへ嫁ぎます。戦争中で配給される物資は本当にわずか。しかしすずはそんな現実も前向きに受け入れ、明るく北条家との生活を営んでいきます。


この作品では当時の背景を語るうえで、“食”を非常に重要なポイントとして描いています。

たびたび当時の日本を垣間見られる食卓が描かれていますが、一見平凡そうな世界観から、当時の日本の「美しさ」や「残酷さ」、「戦争への批判」が訴えられているように感じられるのです。


食べるものは少なくても、すずは道端に咲く花や草を利用してお粥や味噌汁、付け合わせまで作ってしまいます。


そして画面の隅々まで町人の動きや、海や空の自然の風景、花や動物のゆらめきまでが丁寧に描かれ細部まで行き届いた心遣い。


描いているのは「どこにでもあるような日常的な風景」のはずなのに、絶えず飽きさせない場面展開などの工夫や伏線がちりばめられています。


巧妙なストーリー構成




過去から未来へストーリーが単純に進んでいくのかと思いきや、ところどころで「ハッ」とさせられる“気づき”が用意されているのも見どころです。


過去からの一方通行なストーリー展開なだけではなく、「未来から過去へ」と向けられる思いや真実が劇中のいたるところに込められています。


そしてさまざまな伏線。「あの時のあの人がまさか・・・!」と驚かされたり、過去の後悔を反映させた出来事をまた違った登場人物に投影するという工夫。ミステリーではないのにまるでミステリーのような伏線の回収がすばらしいと感じました。


片渕須直監督や原作を書かれたこうの史代さんは、何よりも徹底して調べることを重要視したと語っています。徹底した時代考証や、現地調査、その時代をその場所で生きた方たちへの取材。そうして“リアル”を追及し続けたからこそ誰もが感情移入しやすいストーリーになっているのですね。






のん(能年玲奈)さんが吹き込む主人公の生き様



この映画の主人公「北条すず」の声を演じるのは、女優として活躍しているのんさん。

片渕監督が「ほかには考えられない」とオファーをした彼女の声は、主人公のやわらかい性格と非常にマッチしています。


のんさんは役作りについてこう語っています。

「最初はすごく難しくて、どうしたらいいんだと悩んだんですけど、やっていくうちに絵に息を吹き込むというのが楽しくて。あぁ、声優さんはこういうことをされていたのかと思うと興奮しました」


すずはあまり自己主張のしない、おしとやかで健気な女性です。

表面的にはおとなしそうにふるまいますが、劇中にたびたび登場する彼女の描く絵からは深くて広い感受性が垣間見られます。完璧じゃない、特別美しいわけでもない、それなのに忘れることのできない透明感のある主人公をのんさんは見事に演じています。主人公が人として女性として成長し変化するとき、彼女の声もグッと大人っぽく変わるところも見どころです!



登場人物全員が鮮やかに生きる


この世界の片隅に <出典:twitter.com>
物語の主な登場人物はすずの実家家族、そして嫁ぎ先の北条家の家族です。

登場人物が多いと全員を丁寧に描き切るのは大変なことですが、この映画に登場する人々は誰しもが自分の運命と向き合いながら、たしかにそこに生きています。


「一触即発な性格の兄」「人懐っこい妹」「気の強い義理の姉」など彼らはしっかりと喜怒哀楽を持ち裏も表もある人間なのです。原作を書かれたこうの史代さんは“私は常に真の栄誉を隠し持つ人間を書きたいと思っている”と語っています。


「この世界の片隅に」はまさに登場人物ひとりひとりが己の“栄誉”を隠し持っているように読み取れる作品でした。



戦争のある日常を生きる人々を、まるで私たちの隣人かのように感じられる作品


この世界の片隅に <出典:twitter.com>

私たちはいつだって本や映画の中で、実際にはありえないような出来事や世界を疑似体験することができます。


しかし「この世界の片隅に」はまるで私たちのすぐそばで起こっている出来事なのではないかと錯覚させるのです。


片渕監督もこのように語っています。

「リアリティを追及することは、世界を限定することではないんです。逆に、その世界が存在すると感じられ、見えている以外にあるものを想像力で感じられるようになると思っています」


日常の風景がこんなにも胸を打ち、“なんて美しいのか”と感じることができる。それは“細部まで行き届いた演出”や“主人公すずから見える世界観”が、私たち映画を見る人間のそれぞれの心の中で完成しているからなのかもしれません。


これは単純な戦争映画ではない!そう言い切ることができる作品です。

片渕須直監督の思いが込められたアニメーション映画「この世界の片隅に」をぜひご覧ください!

著者:おしゃ



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