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・『この出会いは必然だった』黒沢ともよ×フォスフォフィライト【宝石の国】

昨年の黒沢ともよさんの活躍のなかで、多くの方の印象に残っている作品といえば「宝石の国」ではないでしょうか。

主人公・フォスフォフィライトは、彼女がオーディションで抜擢された役。
フォスフォフィライト 宝石の国出典:©2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 TVアニメ宝石の国「第一話 フォスフォフィライト」よりオーディションは、制作スタッフ側からの指名制だったそうで、フォス役には黒沢さんを含む数名の方が指名されていました。

2016年の夏頃にあったというこのオーディションを振り返り、彼女は「わたしにとってフォスとの出会いは必然だった」「こんなにキャラクターとシンクロを感じられる運命ってあるんだなって思いました。」と語りました。

普段なら待合室に戻り、声優仲間たちが同じ役を受けると思うとどこか不安な気持ちになることが多いそうですが、フォス役を受けた時は、「(皆様は)何役を受けるんだろう」とふと思ってしまったのだとか。

実際にオーディション当時を振り返り、京極尚彦監督も「フォスをやるのはこの人しかいないなという雰囲気を持っていた」と話しています。

この時のオーディションでは、黒沢さんは台本を見ずに全身を使って動きながら演技をしていたそうで、彼女自身が他のオーディションでもこうして演技をしているわけではないそうですが、台本を読んでこのほうがしっくりくるからとたまたま行った演技が、監督のイメージともマッチしたようです。
出典:©2018 TOHO CO.,LTD すぐわかる『宝石の国』より
黒沢さんの演技ができたところで、京極監督のなかでもフォスのイメージが完成したと話していて、それほどまでにフォスフォフィライトというキャラクターは彼女に自然と馴染み、彼女自身もまた彼を演じることが必然のように感じたのですね。

黒沢さん曰く、言葉遣いが自分の感覚に近かったり、不思議と共感できる部分があったのだとか。

物心つく前から表現者としてこの世界で戦ってきた彼女にとって、末っ子で何もできないフォスの気持ちに『あ、こういうこと言われたことある』って自分と似たところを感じていたそうです。

また、性別や生のない宝石を演じるということで、人間ではない宝石の「彼」に共感してもらうために、『人間より人間でありたかった』とその役作りの難しさについてラジオで語っていました。

『臓器がなく息が切れることもなければ、疲れないし、砕けても痛くないフォスが「めんどくさい」「いやだ」と思うのはどうしてなのか。身体機能の問題ではなく、心因性にしていくためにそのきっかけになるワードを台本や自分のなかで探していくのが大変だった。』と黒沢さんが、そこまで深い所まで考察していることに驚きました。

甘えたがりで能天気で、ひねくれやだけれどどこか諦めのようなところもあって、それでいて物事の本質は見抜いてしまう鋭さを持つフォス。

こうした複雑なフォスフォフィライトというキャラクターを黒沢さんは余すことなく表現していましたし、まるで息をしているように作品のなかで生きていると感じさせる表現力は、「響け!ユーフォニアム」のときにも多くの視聴者が感じていた黒沢ともよさんのお芝居の大きな魅力だと改めて確信しました。

原作ファンからの期待の声も大きく、無機物な宝石たちに感じる生命力や読み手に委ねられる余白の多さが魅力の作品なので、フォスに対する印象も読者によってそれぞれ異なっていたはず。だからこそ、京極監督や原作の市川春子さんとたくさんお話をしながら、フォスフォフィライトという一人格を作っていく行程を丁寧にできたと話していました。

ただ共感できたというだけでは終わらせず、ふとしたシーンやフォスの感情がみえるシーンでも、黒沢さんとともに息をするフォスに「フォスらしい」と思えるリアリズムが感じられたのは、彼女のこうした情熱のおかげだったのですね。

京極監督はそんな黒沢さんの演技について「息づかい・テンポが型破り。いい意味で自由な感じができた」と話していて、あらためて黒沢さんありきのフォスだったことが伺えます。
黒沢ともよ出典:©黒沢ともよオフィシャルブログ Powered by Ameba「宝石の国ついに。(2017/10/06)」より昨年10月から3ヶ月全12話で放送された「宝石の国」ですが、先述の通りオーディションは2016年の夏頃に行われ、アフレコ収録も放送のおよそ一年前には録り終えていました。というのも、通常は絵に合わせて役者が声を吹き込んでいきますが、この作品ではプレスコに近い方法で制作していて、ビデオコンテを作って、そこに声をあててもらって、そのあとに演技に合わせたCGアニメーションを制作するという作り方をしていました。

言葉を変えれば、キャスト陣の演技ありきで作品が制作されていたことになりますが、派手なアクションシーンが加わり、3DCGアニメーションの強みを最大限に活かした作品だったのに、原作の繊細な世界観や独特の空気感が損なわれることがなかったのは、キャストの豊かな表現力が一役買っていたのだと思います。

そして、演技やお芝居で作品を引っ張っていたのは、「誰がみてもフォス」と確信できるテンポやトーン、そして全身全霊の演技を魅せていた黒沢ともよさんだったのではないでしょうか。

制作当時を振り返り、黒沢さんはフォスとしていた生きた時間はとてもとても長く感じていたそうで、収録時にはフォスにのめり込みすぎてしまうあまり、ダイレクトに身体に負担がきていたのだとか。

とくにフォスに大きな変化をもたらした第8話以降の収録時には、フォスを抱え込みすぎて、実際に体調を崩してしまっていたことを明かしています。
アンタークチサイト 宝石の国出典:©TVアニメ宝石の国 公式Twitter(@houseki_anime)より最終回放送時にも、自身のブログで改めて作品を振り返って『心身ともに壊れてしまいそうだった』話していました。

フォスは物語の主人公であり、作中に心身ともに大きな変化を伴う役柄です。

物語が進めば進むほど、彼が抱え込む様々な感情がその小さな身体からあふれだしてしまっているように感じて、観ていて苦しくなってしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

8話以降、フォスは身体の変化に伴い物質の異なる手脚を出し入れするのに自分の身体が耐えきれずに削られていくので、髪の毛を切って削れてしまった身体にはめていくという設定がありましたが、この台本を読んで、なんと黒沢さんは収録前日に髪をバッサリと切って、ショートヘアで収録に臨んでいました。



『フォスと一緒に生きて、フォスと一緒に苦しんだ毎日でした。髪の毛もフォスに合わせて切ったりして、こんなにシンクロすることがあるんだなと思うくらい、運命を感じながら演じさせていただきました。』出典:©Natasha,Inc. All Rights Reserved. コミックナタリー「『宝石の国』初イベントが京都で、黒沢ともよ“情けない”フォスに運命を感じる(2017年9月22日)」より

複雑に変化していっても、不意に現れる以前のフォスらしさや逆に「これがあのフォスなのか」と思ってしまうようなシーン。

世界観と物語が圧倒的すぎるが故に、原作では観る人によってはどうしても情報量が少なく感じてしまうフォスが、黒沢ともよさんの情報量の多い演技力で、より多くの人に共感されるキャラクターとして作品の中で息をしていました。

フォスフォフィライトは、まさに黒沢ともよさんにしか演じることのできなかった役。そう誰しもが確信できるほどに彼女のお芝居・演技は「フォスフォフィライト」そのものにシンクロしてしまっていたのです。
黒沢ともよ出典:©黒沢ともよTwitter(@TomoyoKurosawa)より彼女だからこそ、フォスの言葉を受け止めてアニメーションのなかに息づかせることができたし、フォスという存在を視聴者が最後まで肯定することができました。

月並みな言葉ですが、多くの視聴者の心を動かした彼女の演技力、表現力、そして芝居力は特記すべきものであると改めて感じました。

・繋がりを大切に。ブログやTwitterで垣間見えたほっこりエピソード

幼いころから芸能活動をしていて、年の割に大人びた印象を受けるので、もしかすると彼女の素顔も、少し冷めたクールな雰囲気なのかな?と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

けれど、彼女が紬ぐ言葉のように、黒沢ともよさん自身もとても穏やかであたたかいお人柄です。

お芝居が好きで、演じることが楽しくて、そこに集中しているからこそ、時に誤解を生んでしまうこともあるのかもしれません。

2015年の年末には、彼女の大学受験を応援して事務所宛てにお守りを差し入れてくれたファンの方々が多かったため、そのひとつひとつを各地の神社にお返しに行ったことをブログで明かしていました。

その時は神社の場所がわかる場所のみになってしまったそうですが、「普段行かないような都道府県にふらりと寄れて、とても有意義な時間を過ごすことができました。」と彼女の真面目さと温かさが垣間見えました。

最近では、「宝石の国」のアフレコから1年経っていたものの彼女が他のキャストを誘ってコラボカフェに足を運んでいた様子をTwitterで報告していたり、



2017年に放送されたTVアニメ「サクラクエスト」では、母の日にちなんで自身が演じるエリカの母・アンジェリカを演じていた森なな子さんへアフレコ時にカーネーションをプレゼントされていたことも!
黒沢ともよ出典:©TVアニメ「サクラクエスト」公式Twitter(@manoyama_PR)より
人との繋がりをとても大切にしている人なので、子役時代からゆかりのある俳優さんや事務所の先輩、後輩の舞台にもよく足を運んでいて、時には学校の友人の制作などにも参加したりと、その度にブログでは高まる芝居魂を溢れんばかりの情熱で書き留めています。

また、声優に留まらず交友関係が広いので、自身が面白いと思ったことに積極的に向かっていって、色々なものを吸収していってるのでしょう。

感受性豊かな彼女が様々なフィールドで感じたことが、お芝居のなかに息づいていたのですね。

・「演じる役を生きる」黒沢ともよさんの表現者としてこれから

黒沢ともよ出典:©黒沢ともよTwitter(@TomoyoKurosawa)より

「演じる役を生きる」


実際には、言葉にするほど簡単なことではありません。

幼い日に「役者として生きる」と決めた彼女が向き合ってきたものは、わたしたちの想像する以上のものだったと思います。

どの作品に対しても誠実に向き合い、自身の演じるキャラクターを一番魅力的にみせるためには自分の何もかもを犠牲にしても良いというほどに全身全霊をかける彼女のお芝居。

だからこそ伝わってくる感動があり、多くの人を魅了するのだと思います。
黒沢ともよ出典:©黒沢ともよTwitter(@TomoyoKurosawa)より
2016年8月には、彼女にとって久しぶりとなる舞台への出演も果たし、声優として大忙しの彼女が、再び舞台へ挑戦するということで彼女自身も「リハビリ」がとても大変だったと後のブログで語っていました。

そして2018年9月には劇団AUN 第24回公演『あかつきの湧昇流(ゆうしょうりゅう)』への出演が決定しました!

こちらは彼女にとっても縁の深い吉田鋼太郎さんも出演されるということで、声優としてだけではない彼女の魅力がまた多くの方に届く機会になりそうですね♪

声優として素晴らしい技術はもちろん、心意気や情熱なども作品をさらによいものへ昇華してくれる役者さんだと思うので、今後も様々なアニメ作品に携わってほしいと思いつつ、やはり彼女は表現者として一つの世界にとどまっているのはもったいないと感じるので、様々なフィールドで活躍していってほしいと願わずにはいられません。

これからも自由に、のびのびと、彼女にしかできないお芝居で、様々なキャラクターや人物たちとともに生きていってほしいですね。

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