約一万人に一人の確率で発症するという、先天性の小眼球症に悩まされた盲目のピアニスト・辻井伸行さん。光を知らない彼が奏でる音色は、抱えているはずの闇に反し、流れる川面のように美麗さで聴く者を魅了します。
上手い演奏は数あれど、心を爪弾く音色を奏でる。そんな彼の人生とは、一体どのようなものだったのでしょうか?
類まれなる『耳』が与えられた幼少期
辻井伸行さんの幼少期は、音楽と共にあったといっても過言ではないでしょう。彼はピアニスト『スタニスラフ・ブーニン』の奏でる『英雄ポロネーズ』を聞くと、手を叩いて喜んでいたそうです。しかしある日、あまりにも聞きすぎていたため擦り切れてしまったCD。
同じく『英雄ポロネーズ』を買ってきて聞かせてみせても、以前のように喜びません。両親はそこで、奏者が違うことに気付いたそうです。
まだ言葉も話せない子供の時期に、既に耳から得る感性が豊かだったのです。