それに、「持っていたら、いろいろと考えなきゃいけない」
指揮棒って、何かに似ていませんか?そう、魔法使いが持っている魔法の杖にソックリです。あの細い棒1本で何十人ものオーケストラを指揮するのですから、まさに指揮者の魂が込められているとも言えます。実際、この「魔法の杖」に並々ならぬ拘りをもつ指揮者もいます。
実は、小澤征爾さんもかつてはそんな1人でした。大先輩ユージン・オーマンディが使っていた特製の指揮棒が、あんまり使いやすそうに見えたので、大胆にも控室から「失敬」しちゃったこともあったそうです。
でも、ちょっとしたきっかけで指揮棒を使わなくなると、逆に、「持っていたら、いろいろと考えなきゃいけない」ことに、気づいたといいます。それでも、今までずっと一緒だった盟友とも言える仕事道具を手放すのは、普通は大変なことです。それができてしまうのが、小澤征爾さんの凄いところなのでしょうね。
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極めつけは、「みんな見ていない」
もうひとつ、小澤征爾さんが指揮棒なしで指揮をしてみて気付いた重大な事実は、オーケストラの団員が指揮棒の有無に無関心だったことです。棒があろうがなかろうが、「みんな見ていない」ことを知ってしまったのです。
指揮者にとっては魂のシンボルともいえる指揮棒ですが…、指揮をされる側の、オーケストラの団員にとっては必ずしも必要ではないことを知って、小澤征爾さんはいさぎよくこれを捨てる決心をしたのですね。
大人になっても、子供のように純粋なものの見方を失わず、柔軟に変化を続けていけるところが、小澤征爾さんがいつまでも現役の第一線で活躍し続けられる理由なのでしょう。
一番大事なことは何か?見極めることが重要
指揮棒をうっかり家に忘れてしまったことをきっかけに、指揮者にとっても、オーケストラの団員にとっても、指揮棒が必ずしも必要ではないことに気づいた小澤征爾さんは、いさぎよく指揮棒に別れを告げました。一番大事なことは何かをしっかりと見極めることが、人生にとって、とても重要だということを教えてくれます。