③「青空侍」の誕生
この作品のテーマであり、原監督はタイトルにもしたかったという「青空侍」。
戦国時代について調べていた時、原監督は司馬遼太郎の短編小説「大阪侍」というタイトルの響きを気に入り、「〇〇〇侍」とつけたいと考えたそうです。
「いつも空を見ている侍、じゃあ青空侍だ、って」と語る原監督。空を見ている侍のイメージがどこから来たのかを中島さんが尋ねると、「それはもうなんとなくですね。青空に浮かんだ雲っていう存在が、彼の立場を表している絵だと思ったので」と原監督は語りました。
「原さんがオトナ帝国をやった時に、次は作れないだろうと正直思ったんですよ」と話す中島さん。「映画作家として、一つの枠のある作品の中で、行く所まで行っちゃったなと思ったので。次大変だろうなと思ったら、次は別ベクトルの傑作だった」「これはもう原恵一という作家の誕生というかな、二本続けてやってるわけだから」と二作連続で名作を生み出した原監督を絶賛しました。
原監督はしんちゃん映画について、「プログラムピクチャーのファミリー向けのアニメなんだけど、そういうアニメに出資する人たちっていうのは、やっぱり子供が安心して見られるものを求めていて、冒険を望んでないんですよ。だけど、ぼくらが子どもの頃にみた子供向けの作品って、ものすごく残酷だったんですよ。そういうものがいつの間にか自主規制でどんどん表現が軟弱になっていったということに、僕はなんか憤りがあって、それでそういうものに挑戦したくて」と、たとえ商業映画であっても、表現の可能性に挑戦し続けていく姿勢を語りました。
クレヨンしんちゃんは「漫画アクション」という青年漫画雑誌から誕生したキャラクター。学年誌から生まれた「ドラえもん」などとは違い、元々品行方正ではなく、しんちゃん映画は初期の頃から冒険できる作品だったという話もありました。
④オトナ帝国症候群

(MC:アニメ評論家・氷川竜介さん)
しんちゃん映画のプロデューサーもつとめた中島さん。原恵一監督がいなくなってからは大変だったと語ります。
「二本突出して傑作が出る。そのあとは、残された人たちでこの偉業をどうするって話になるわけですよ。どっかでしんちゃんは感動しなきゃいけないみたいな”オトナ帝国症候群”がある」(中島)
「自分が発言ができるようになったころぐらいから、いっぺんその感動路線をやめようと(思った)。“やっぱりしんちゃんはギャグ映画なんだから、ギャグで子供を笑わせて、あぁ面白かったって言わせる作品にしないと、先はないよね”っていう悪戦苦闘をずっとやってたんですよ」(中島)
原監督も初代の本郷みつる監督から引き継いだ時は、「同じことをやっても面白くない」と思っていたようで、自分なりの挑戦を毎作試みていたそうです。しかし興行成績は毎年落ちていくばかり。「“お前が好きなことばっかりやってるから、客がこないんだ”といつも怒られていた」と振り返りました。「もう来年はない」と毎年言われていたそうですが、もう一回だけとチャンスをもらい、最後だからと子供に大サービスしようと思って作ったのが『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』。すると興行成績は上がり、次の年もやることに。それで再び挑戦的な内容に挑んだのが「オトナ帝国」でした。
⑤時代劇×恋愛×死
「『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』(以下:「雲黒斎の野望」)の時って、原さんどれぐらい関わったんですか?」という中島さんの質問に、「戦国時代のパートはほぼ僕がやりましたね」と答える原監督。
「「雲黒斎の野望」と「戦国大合戦」ってある種、裏表みたいなところがあるじゃないですか。で、恐らく「戦国大合戦」は「雲黒斎の野望」で原さんが色々やれなかったことを、自分が監督になったことで全部思い切ってやろうみたいな感じにしたのかなって気もしたんですけど」と中島さんが自身の推測を述べると、原監督はすかさず「その通りです」と認めます。
「「雲黒斎の野望」の時に、あんまり時代劇詳しくなかったんだけど、いろいろ自分なりに資料を読んだら面白くなって、ものすごくのめり込んだんですよ。終わった時に、またいつかやりたいなと思ったんですよ。戦国物を」「オトナ帝国はけっこう興行的にもよかったので、あんまり口出しされずにできるなあって感じがあったんですよ。じゃあ何をやろうっていったら、自分の中で、一番しんちゃん映画でハードルが高いと思われる“時代劇”、そしてあと“恋愛”を入れた、さらに主要な主人公が“死ぬ”という、この3つを思いついて」と語り、“時代劇”、“恋愛”、“主要人物の死”という三本軸が最初の構想から決まっていたことを明かしました。
■トークショー終了

最後に原監督は「今日初めてこの映画をみた人で面白かったと思った人は、ぜひ僕のほかのしんちゃん映画も見ていただければと思います。よろしくお願いします」と述べました。
中島さんは「僕もこのトークの前に改めて戦国大合戦を見直して、時代劇映画として傑作だなと改めて思ったんですね。それぐらいやっぱり映画として面白い。映画的なメタファーとか表現も含めて、本当によくできてる映画だなと思って、すごいなと改めて思いました。でもそれほどではないですけど、「逆襲のロボとーちゃん」も面白いので、それも見ていただければありがたいかなと思います」と自身が脚本を担当した『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』についても触れ、会場が笑いに包まれる中トークショーは終了となりました。