2024年末、NewJeansと所属事務所ADOR(アドア)との契約トラブルが表面化しました。プロデューサーであるミン・ヒジン前代表の解任をきっかけに、メンバーたちはADORとの信頼関係が破綻したとして契約終了を主張し、独自での活動を宣言します。
一時はK-POP界でも大きな話題となりましたが、裁判の長期化にともない、当初ほどの注目は集まらなくなってきたのが現状。とはいえ、その裏では裁判所による重要な判断が下されています。
本記事では、「NewJeansはいまどういう立場にあるのか?」「今後どうなりそうなのか?」を、現在の裁判状況をもとにわかりやすく整理してお伝えします。
NewJeansとADORの裁判──何が争点?

裁判の本質は、NewJeansとADORの専属契約が現在も有効かどうかという点にあります。
NewJeans側は、「事務所との信頼関係が破綻した」として、2024年11月に専属契約の自動終了を主張し、独自での活動を開始しました。
一方、ADOR側は「契約は今も有効であり、メンバーたちは引き続きADORに所属している」と反論。そのうえで、2024年12月に契約の有効性を確認する訴訟(本案訴訟)を提起しました。
この裁判こそが、現在進行中の“本丸”となる争点です。第3回の審理は2025年7月24日に予定されており、判決はまだ出ていません。
仮処分ってなに? なんでそんな話になってるの?

ここで出てくるのが、最近の報道でもたびたび見かける「仮処分」という言葉です。
仮処分とは、「本裁判の判決が出るまでの間に、当事者が勝手に動いて取り返しのつかない事態になるのを防ぐための一時的なルール」を裁判所が決める制度です。
この制度はエンタメ業界に限らず、ビジネスの契約トラブルなどでも幅広く使われています。
ADORは、「本裁判の結果が出る前にNewJeansが勝手に広告契約などを進めれば混乱が生じる」として、2025年1月に独自活動禁止の仮処分を裁判所に申請しました。
その結果、裁判所は3月にこの申請を認め「NewJeansはADORの許可なく芸能活動をしてはならない」という判断を下しました。
NewJeans側はこれに不服を申し立てましたが、4月に却下され、更に抗告したものの6月17日には高裁でも再び棄却されました。これにより、仮処分は正式に確定しています。
原則として、仮処分に対する即時抗告は一審+高裁で終局です。高裁の判断に対してさらに「最高裁へ上告する」といった制度は、仮処分では通常認められていません。NewJeans側はすでに仮処分の抗告手段を使い切っており、これ以上の争いはできません。
本裁判と仮処分の関係は?
現在進行中なのは、NewJeansとADORの専属契約が今も有効かどうかを争う本裁判(本案訴訟)です。こちらはまだ審理中で、判決は出ていません。
一方、その本裁判の結論が出るまでの暫定措置として出されたのが仮処分です。すでに裁判所は、「ADORの承認なしにNewJeansが芸能活動を行うことは禁止される」という仮処分を正式に下しています。
つまり現時点では、裁判所は契約の有効性についての最終判断はしていないものの、判決が出るまでの間は活動を制限するという判断を明確に示している状態です。
仮処分に違反した場合はどうなる?

2025年5月、裁判所はさらに仮処分に対して「間接強制」を認める判断を下しました。
これは「NewJeansが仮処分に違反して独自に活動した場合、1人あたり1回につき10億ウォン(約1億1千万円)をADORに支払う」という義務が発生するという内容です。
裁判所は、過去にNJZ名義で行った活動(香港公演・新曲リリースなど)を踏まえ、「今後も違反の可能性がある」として罰則に実効性を持たせたと説明しています。
NewJeansメンバーの現在は?
仮処分の決定を受けてから、NewJeans側はNJZとしての痕跡を次々と取り下げる対応を見せています。
具体的には、
- インスタアカウント「@njz_official」は「@mhdhh_friends」に改名
- YouTubeやTikTokに投稿されていたNJZ名義の動画はすべて削除
- メンバーの家族が運営していたとされるSNSアカウントの名称や投稿内容も変更
こうした動きは、裁判所の判断に形式上は従う姿勢を見せたものと見られます。ただし、これまでの主張から「自発的な協力」というよりは、「違反による罰則回避を意識した消極的対応」という見方も出ています。
つまり、NewJeans側は「ADORと完全に決別したい」という姿勢を貫きつつも、裁判所の制限命令には一応従わざるを得ない状況にあるというのが現状です。
楽曲の強さは健在──リスナーの支持は今も根強く

法廷での争いが続く一方で、NewJeansの音楽は今も多くの人に聴かれ続けています。
2025年6月17日、ADORが公式に発表したデータによれば、代表曲『New Jeans』はSpotifyでの累計再生数が4億回を突破。これは彼女たちにとって6曲目の4億超えであり、グループ全体の総ストリーミング数は63億回を超えるという驚異的な数字に達しています。
裁判や事務所とのトラブルによって活動が制限されているにもかかわらず、音楽自体の人気は落ちるどころか、むしろ存在感を強めている印象すらあります。
「音楽そのものの価値は揺るがない」──これは、今のNewJeansをめぐるリアルな評価のひとつと言えるでしょう。
今後の注目ポイントは?──鍵を握る「本裁判の判決」

今後、最大の焦点となるのは、NewJeansとADORの専属契約が「有効」か「無効」かを裁判所がどう判断するかです。
もし契約が「有効」と認められれば、メンバーたちは今後もADORに所属したまま活動を行うことになります。反対に、「無効」と判断されれば、NewJeansは法的にも独立した形での活動が可能となり、グループとしての今後も大きく動くことが予想されます。
現在(2025年6月時点)はあくまで「判決が出るまでの暫定措置(=仮処分)」が確定しただけ。本当の意味での結論は、本案訴訟の判決に委ねられています。
裁判の行方が今後のNewJeansの活動方針を左右することは間違いなく、引き続き注視していく必要があります。