宝塚の鬼才・齋藤吉正の作る、クセがすごい作品にファンが夢中になる理由

2018年7月14日

ファンの”観たい”を具現化する、多彩なお芝居作品

原作ありの作品も、オリジナルの作品も、絶妙にファンの”観たかった!”という気持ちを刺激してくれるのが、齋藤先生作品の特徴です。

どれも宛て書きと思えるほどピッタリの作品ばかりで、タカラジェンヌへの深い愛情を感じざるを得ません。

例えば、最新作でもある月組「愛聖女」は、主演の愛希れいかさんにジャンヌ・ダルクを当てはめ、最高にキュートなキャラクターとして描き出しました。ポスターの可愛さも、公開当時から大きな話題になりましたね。

愛聖女出典:©宝塚歌劇団 公式HP 月組公演『愛聖女-Sainte♡d’Amour-』より他にも、マスクヒーローが主役ということで話題を集めた「MY HERO」(主演・芹香斗亜)。

MY HERO 宝塚出典:©宝塚歌劇団 公式HP 花組公演『MY HERO』より北翔海莉さんが勧善懲悪のヒーローとして舞台を駆け回る「風の次郎吉 - 大江戸夜飛翔 -」…などなど、軽快な作風も特徴の1つ。

風の次郎吉 宝塚出典:©宝塚歌劇団 公式HP 花組公演『風の次郎吉—大江戸夜飛翔—』よりそれでいて、「カラマーゾフの兄弟」のような重厚な作品、サヨナラ公演として涙を誘った「桜華に舞え」、海外ミュージカルを見事に宝塚版ロマンスに潤色した「TOP HAT」など、なんでもござれの作風が魅力です。

また、個人的に、齋藤作品(お芝居)ではオープニングが非常に楽しみ!

時には映像演出も取り入れ、登場人物が次々と登場してくる幕開けは、それだけでテンションが上ってしまいます。

濃すぎるショーは中毒性あり!宝塚の枠を超える”サイトーの犯行”にも注目

宝塚にはたくさんの演出家がいらっしゃいますが、お芝居とショーの両方をバランスよく、精力的に発表している演出家はごく僅かです。

齋藤先生のショーは、宝塚らしいきらびやかさや華やかさを表現しつつ、斎藤先生の作品でしかなし得ない独特の濃すぎる世界観が最大の特徴。どの作品でも、はっとするくらいお衣装が素敵なのも印象的です。

「こう来たか!」と突っ込みたくなるような異色の場面があったかと思えば、ディズニーとコラボした「LOVE & DREAM」ではうっとりするような王子様の場面を作り上げるなど、非常に乙女心も分かってらっしゃいます。

LOVE & DREAM 宝塚出典:©宝塚歌劇団 公式HP 星組公演『LOVE & DREAM』よりまた、齋藤先生のショーと言えば、”オタクホイホイ”というか、宝塚の枠を超えた選曲を見せてくれるのも楽しみの1つ。

「サイトーの犯行」と揶揄されることもありますが、ジェンヌさんが歌い踊ってくれる楽曲は、不思議とどれも宝塚にマッチして、新しい客層を掘り起こしてくれているに違いありません。

例えば、最新のショー星組「Killer Rouge」では、綺咲愛里さんがアニメ「ベルサイユのばら」の主題歌・「薔薇は美しく散る」を熱唱。初舞台ロケットでは、「桜」をテーマにしたJPOPなどをメドレーにしたことでも話題になりました。

出典:©宝塚歌劇団 星組公演『ANOTHER WORLD』『Killer Rouge(キラー ルージュ)』初日舞台映像(ロング)より
他にも、月組「Misty Station」では霧矢大夢さんが「魂のルフラン」を美しく歌い上げたり、花組「TAKARAZUKA∞夢眩」では蘭乃はなさんと望海風斗さんに「Preserved Roses」を歌わせたり、花組「MY HERO」のショー部分ではアリス十番さんの「全開☆マイヒーロー」と内田真礼さんの「ギミ-!レボリューション」を取り入れたり…枚挙に暇がありません。

極めつけは、朝夏まなとさんのライブ「A Motion」。

A Motion 朝夏まなと出典:©宝塚歌劇団 公式HP 宙組公演『A Motion』より朝夏まなとさん初舞台の2002年のヒットソングを盛り込んだメドレー場面では、耳馴染みのあるJPOPが次々登場。モーニング娘。や松浦亜弥、氷川きよしを歌うタカラジェンヌ…貴重な舞台でした。さらには、ゴールデンボンバーの「ローラは傷だらけ」まで熱唱。ライブ会場さながらの盛り上がりを生んだのは、齋藤先生の名演出あってからこそでしょう。

あまりにサービス精神旺盛に作り込まれた作品は、初めて見たときはお腹いっぱいになるほど。

でも、びっくりするくらいそれが中毒性となり、ついついリピートしてしまいます。このスルメ感が、齋藤作品最大の恐ろしさとも言えるかもしれません。”

齋藤先生の作品は、どれも組子への愛に溢れている

齋藤先生の作品に共通して感じるのは、組子一人ひとりを輝かせる天才だな、ということ。男役をかっこよく見せてくれるのはもちろん、娘役にもスポットを当て、キュートな見せ場を用意してくれます。

内容がギュウギュウなのは、それだけ宝塚や組子への愛が溢れている証。

ご贔屓の組に齋藤先生が登板するとあれば、どんな味付けをしてくれるのか、楽しみでならないファンは多いはずです。

独特の齋藤ワールドにひたろう!

齋藤吉正出典:©宝塚歌劇団 公式HP 『Killer Rouge(キラー ルージュ)』の魅力より齋藤先生の作品は、そのクセの強さから賛否両論を巻き起こしますが、ついついクセになって通ってしまう奥深さがあります。

一度耳にしたら離れない主題歌、これでもか!と内容盛りだくさんの舞台、組子への溢れんばかりの愛…その魅力は語りきれず、座付き演出家として、さらなる活躍をお祈りするばかりです。

そして、次の新作はどの組で、なにを手がけるのか?どんな挑戦や(全開の趣味が)見られるのか?考えるだけでもワクワクしてしまいます。

これまであまり演出家に興味がなかった方も、これを機に演出家に着目して作品を見比べてみてください。

きっと、より奥深い宝塚の世界が見えてくるはずです。

著者:海野りんご