☆『リトルウィッチアカデミア』サウンドトラック集
出典:©2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会 TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』公式ツイッター(@LWA_jp)より
続いては、2017年1月から2クールで放送されていた『リトルウィッチアカデミア』から。
手掛けられたのは大島ミチルさん。アニメ「鋼の錬金術師」や「四畳半神話大系」、ドラマや映画などの音楽も多く担当されているので名前を見かけたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
魔法モノやファンタジー作品への起用も多く気品を感じる音楽が印象的で、筆者は「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品で大島さんの劇伴の虜になりました。
合唱曲やオーケストレーションが得意ということで、LWAでもそうした厚みのあるシンフォニック楽曲を中心に、魔法の世界で起こる出来事へ気持ちを高揚させるような「ファンタジー感」が詰まった楽曲が多いです。
事前PVでも流れていた「シャリオのテーマ」は特にLWAらしい曲で、作中の多くの楽曲のメインテーマにもなっています。
いかにもな民族楽器の音が鳴る「呪文」や不穏な事が起きているとわかる「ピンチ!」など振り幅はかなり広いのですが、いい意味でアニメらしくないというか曲自体もかなり聴かせるかんじというか、アニメ音楽を聴いているというよりも洋画の劇中でかかっているような音楽に近いと言えばよいのでしょうか。
だからこそ「デッドヒート」のようなアニメらしい劇伴曲もより映えて、緩急のあるストーリーにとてもマッチしていたように思います。LWAはテイスト自体が流行りのアニメとは少し違っていて、セル画のような人の体温を感じる絵柄だったので、そうした雰囲気や世界観との相性も絶妙でした。
そのシーンをより鮮明に引き立てる劇伴の良さに気付ける作品で、単純に音楽だけ聴いていてもわかりやすく劇伴を初めて買うという方にもおすすめできる劇伴かなあと思います!
LWAは深夜枠だったのがもったいないくらい世代を選ばず、観る人を選ばない作品でした。王道を極めて貫いた”熱量”と”本気”をひしひしと感じるたび、わたしはLWAがどんどん好きになっていきました・・・
25話の終盤で使用された「Shiny Ray -#25ver-」は、聴くたびにあのシーンが頭の中に広がって心拍数が上がってしまいます!
☆TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック「Sound of Foggy London」
出典:©Princess Principal Project TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』公式ツイッター(@pripri_anime)より
最後は、2017年7月から放送されていた『プリンセス・プリンシパル』から。
19世紀ロンドンのスチームパンクな世界観が印象的な作品でしたが、その世界観はやはり劇伴によって高密度に広がっていました。
劇伴を手掛けられたのは「空の境界」や「ソードアート・オンライン」、「魔法少女まどか☆マギカ」を担当された梶浦由記さん。スタイリッシュな音楽から重厚感のあるものまで作品の世界をグイっと引き伸ばしてくれる作曲家さんです。
個人的に梶浦由記さんが担当されるということでアニメ放送前から注目していたのですが、劇伴もよければ世界観もかなり好みで夏アニメの中でも特にお気に入りの作品でした。
音楽は全体的にスモッグがかかったような暗めなシンフォニック曲が中心なのですが、サウンド自体は重すぎず軽すぎず絶妙なバランスで作られていて、綺麗なコーラスワークがここぞという時に入る梶浦さんならではの気持ち良さを感じます。
アニメの中でも印象的なシーンに使用されていたのは、任務遂行時に流れるジャジーでどこか不安な気持ちを煽られる「espionage trap」、
かなり重めなコンテだったろうに、スタイリッシュさを感じられる見事なバトルシーンを引き立てていた「go and get it!」や「battle of the shadows」など。
また、挿入歌としても使用され特に視聴者の印象に残ったであろう6話ラストシーンでドロシー達が歌っていた「moonlight melody」は、無情な結末を迎えた6話とは似合わない明るく誰もが口ずさめるような曲でした。(だからこそ涙が止まらない・・・)
梶浦さんはこの曲を「キャラクターの歌ではなく登場人物が元々知っていた、その世界にあった歌」として書かれたのだとか。
中でもコメントを多く頂いたmoonlight melodyは……キャラクターの歌ではなく「登場人物が元々知っていた、その世界にあった歌」であるという立ち位置がまた、書く際にも面白かった曲でございました。
— 梶浦由記 Yuki Kajiura (@Fion0806) 2017年9月29日
なので歌詞も敢えてこの作品とは違ったストーリーを勝手に頭で作り上げて、それを元に描いています。その曲を口ずさんだ彼や彼女が何らかの思入れができるような元のストーリーがあった、と仮定して。きっと「お父さん」がまだ若かった頃にこの世界で流行した映画の主題歌。そんな立ち位置で。
— 梶浦由記 Yuki Kajiura (@Fion0806) 2017年9月29日
映画の最後に、オムニバスで書かれた「派手な舞台には決して登る事のない筈のただの人たち」がみんな主役となって楽しそうにグランドフィナーレを迎えるような、煌びやかなステージに流れるような曲にしたいんです、とMixの際にもお願いして。
— 梶浦由記 Yuki Kajiura (@Fion0806) 2017年9月29日
酒場で歌っていたおじさん達も、きっと若い頃にこの映画を見て泣いた事があったんじゃないかなって。だからこその酒場でのあの楽しそうな合唱になるのではと。「お父さん」と彼女にも深いストーリーがあったけれども、
— 梶浦由記 Yuki Kajiura (@Fion0806) 2017年9月29日
きっとあのおじさん達もみんな若い頃の自分自身のストーリーを、歌のストーリーと重ね合わせながらその時ばかりは自分が主役になって歌っていたんじゃないかなって。そんな事を考えながら曲を作れるのもまた「劇伴」という、作品と共に音楽を紡ぐ楽しさの一つでございます。
— 梶浦由記 Yuki Kajiura (@Fion0806) 2017年9月29日
サントラではドロシーとベアトリスの二人で歌った新録Ver.が収録されているのですが、これが「映画のオリジナルVer.のカバー」なのかもしれませんね。あの世界の人々が愛した楽曲をぜひ味わってみてください♪
劇伴のススメ。アニメが好きなら音楽にも注目してみて!
今回はこの1年ぐらいの新しめの作品から選んでみました。
ちなみに2018年冬アニメで放送される『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の音楽を今からとても楽しみにしています。こちらはElements GardenのEvan Callさんが手掛けます!
出典:©youtube「KyoaniChannel」アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』PV第3弾 より
冒頭でも言いましたが、今回紹介させていただいたものはどれも作品自体が大好きな作品でして、なんかこう苦労はしたけど、すごいいいチームで同じ気持ちで作品を作ってきたんだろうなって感じるんですよね。
わたしはそういう創り手の愛が伝わる作品が好きなんです。原作サイド、アニメサイドどちらのスタッフもこぼれるぐらいたくさんの愛を注いでつくられたアニメが好きです。
アニメの好みなんて人それぞれだし、沢山の作品のなかで良作だの駄作だのって話のネタにされることも多いわけですけど、自分が「好きだ」と思った作品は、ぜひ劇伴もじっくり聴いてみることをおすすめしたいんです。
作画が崩れてるとかよく動いてるとか、アニメって視覚で入ってくる情報に気を取られがちなところがあると思っていて、実際には音で入ってくる情報があってこそ完成されている「なくてはならないとても大事な存在」だと思っています。アニメ好きな人にはアニメ音楽、劇伴にもどんどん興味を持ってほしいなあと。
劇伴作家の方々は作品の為に曲を書いていて、ものすごい熱量を込めて作ってくれていると思うのです。その作品が嫌いだったらきっと作れないと思うのです。自分と同じようにその作品を好きと思ってる人が音楽を作ってるんですよ。めちゃくちゃ素敵じゃないですか?????
さて、とりとめもない話をしてしまいましたがこのへんで。
音楽に詳しいわけでも、一つの作品についてめちゃくちゃ語れるわけでもない、さらには文字にするのも得意ではないので「何言ってんだこいつ・・・」となったかもしれません。
一アニメファンの戯言にここまでお付き合いいただいた方、本当にありがとうございます。
あなたが好きなアニメを「ちょっともう一回観てくるわ」って気持ちになってくれていたら、うれしいですわたし。
アイキャッチ画像出典:©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」ジャケット写真より