2022年の公開直後から台湾ホラー映画史上最高の興行収入を塗り替え、社会現象を巻き起こしたケヴィン・コー(柯孟融)監督作品『呪詛(じゅそ)』。
同年7月にNetflixで世界配信されると、日本を含む各国で「怖すぎる」とSNSを席巻しました。
本記事では、本作のあらすじや詳細なキャストプロフィールに加え、モデルとなった「実際に起きた事件」や、製作秘話を徹底解説します。
もくじ
『呪詛』作品概要

- 邦題: 呪詛
- 原題: 咒
- 英題: Incantation
- 公開日: 2022年3月18日
- 監督: ケヴィン・コー(柯孟融)
- 脚本: ケヴィン・コー(柯孟融)、チャン・ジャウェイ(張喆崴)
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あらすじ
6年前、ルォナンと恋人のアードン、アードンのいとこのアーユエンは、セルフメディアスタジオ「ゴーストバスターズ」を結成し、心霊スポットを訪れては怪談や都市伝説を解読し、迷信を払拭することに力を注いでいた。
そのプロジェクトのひとつで、彼らは遠く離れた山中にある「陳氏の館」にたどり着き、そこに隠されていた不気味なトンネルを探検する。
陳一家は、「大黒仏母」を本尊としている雲南系密教を信仰していた。一家は夜な夜な儀式や霊媒を行い、謎の八文字の呪文「火仏修一,心薩嘸哞」を唱えていて…
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『呪詛』主要キャスト
リー・ルォナン役:ツァイ・シュエンイェン(蔡亘晏)

リー・ルォナン
本作の主人公であり、呪いから娘を守ろうと奔走する母親。
演:ツァイ・シュエンイェン(蔡亘晏)
本作での迫真の演技が絶賛され、台北映画祭で主演女優賞を受賞しました。劇中では、極限状態に追い込まれた母親の狂気を見事に表現しています。
ドゥオドゥオ役:ホァン・シンティン(黄歆庭)
ドゥオドゥオ
ルォナンの娘で、呪いの標的となってしまう少女。
演:ホアン・シンティン(黄歆庭)
シンティンちゃんは、当時わずか6歳ながら難しい役どころを演じきり、多くの視聴者に「子役とは思えない」という衝撃を与えました。
シエ・チーミン役:カオ・インシュエン(高英軒)

シエ・チーミン
ドゥオドゥオを預かる児童養護施設の責任者であり、ルォナンを支える協力者。
演:カオ・インシュエン(高英軒)
数多くの映画やドラマで活躍するベテラン俳優です。本作の演技で台北映画祭の助演男優賞を受賞しました。
チェン・リードン(アードン)役:リン・ジェンルン(林敬倫)

チェン・リードン(アードン)
ルォナンの恋人。6年前、映像制作グループ「ゴーストバスターズ」のリーダー格として、禁忌とされる山奥の儀式に潜入する。
演:リン・ジェンルン(林敬倫)
俳優としてだけでなく、台湾の超人気スポーツバラエティ番組『全明星運動會(All Star Sports Day)』での驚異的な身体能力でも知られるマルチなスターです。
チェン・ジェンユエン(アーユエン)役:ウェン・シンユー(温慶禹)

チェン・ジェンユエン(アーユエン)
アードンのいとこ。映像制作グループのカメラ担当。
演:ウェン・シンユー(温慶禹)
舞台演劇のバックグラウンドを持ち、その独特の存在感で数々の話題作に出演している個性派俳優です。
作品のモデルとなった恐怖の実話

本作『呪詛』の着想源のひとつとされているのが、2005年に台湾・高雄市鼓山区で起きた、呉姓一家による集団妄想事件です。
高雄市・呉一家で起きた異変の始まり
呉一家は6人家族で、高雄市楠梓区にある住宅型の神壇を長年信仰していました。2005年、三女がその神壇を訪れた後、自ら「哪吒三太子が憑いた」と語り始め、「台北で飲食店を営む長女が邪霊に取り憑かれている。家に戻らなければ助からない」と訴えます。
これを受け、母親は長女を台北から高雄の実家へ呼び戻しました。しかし長女は帰宅後、毎晩強い悪夢に悩まされ、次第に言動にも異変が見られるようになります。やがて「観音菩薩が自分に降りてきた」と語るようになり、精神的に不安定な状態が続いたとされています。
神壇への依存と集団妄想
一家は再び神壇に助けを求め、そこで「家に安置している三太子の神像に良くないものが入り込んでいる」との神示を受けました。家族はその言葉を信じ、神像を処分し、座禅や祈祷などを行うようになります。
しかし、こうした行為は家族全員の精神状態をさらに不安定なものにしていきました。やがて6人全員が次々と「神が憑依した」と主張するようになり、それぞれが異なる神格を名乗り始めます。
悲劇的な結末

父は玉皇大帝、母は王母娘娘、長女は観音菩薩、次女は七星娘娘、末娘は哪吒三太子、長男は済公禅師を名乗りましたが、互いに相手を「偽りの神」だと疑う状況になっていきました。
その結果、家族内で「除霊」と称した行為がエスカレートし、最終的に長女は自宅内で拘束されたまま衰弱し、命を落とします。一家は、「長女は力尽きただけ」と信じ込み、異変が明らかになるまで時間がかかりました。
その後、近隣住民の通報により事件が発覚。残された家族5人は「遺棄致死罪」で起訴され、精神鑑定の結果、集団性妄想(集団精神病)と診断されています。
社会現象となった「呪文」と「手印」

本作がこれほどまでに話題となった要因の一つが、劇中に登場する「火仏修一、心薩嘸哞(ホー・フォー・シウ・イー、シン・サ・ウー・モー)」という呪文と独特の手印です。
SNS上ではこの手印を真似した動画が多数投稿され、一種の社会現象となりました。
徹底したこだわりが生んだ宗教設定と裏話

本作のリアリティを支えているのは、美術チームの徹底した作り込みです。中でも視聴者に強烈な印象を残した「大黒仏母」は、その象徴的な存在といえるでしょう。
実在しない「完全オリジナル」の神
劇中に登場する「大黒仏母(だいこくぶつぼ)」や、あの不気味な呪文「火仏修一、心薩嘸哞」、独特の手印は、すべて製作チームによる完全な創作です。
ケヴィン・コー監督は「あまりにリアルで実在の神ではないかと質問されるが、それは美術チームへの最高の賛辞だ」と語っています。
実在宗教を思わせる巧妙なモチーフ

「大黒仏母」という存在は、複数の宗教的イメージを融合して生まれています。
名称や造形には、密教に登場する大黒天や鬼子母神などを連想させる要素が含まれています。また、仏教の守護神「大白傘蓋仏母」に対し、「白(善)」の対極として「黒(悪)」を冠したそうです。
さらに、監督自身の幼少期の記憶や、清代の怪異譚といった古典的恐怖が重ね合わされることで、「どこかに本当に存在しそうな宗教」というリアリティが生み出されているのです。
まとめ
『呪詛』は単なるホラーではなく、実話や集団心理といったテーマが深く絡み合った作品です。観終わった後、あの呪文が頭を離れなくなるような恐怖をぜひ体験してみてください!
