ENHYPENのメンバーによる「jap」という言葉の使用が、いまも波紋を広げ続けています。
本記事では、この発言がファンダム内にどのような分断を生んだのか、SNS上で何が起きたのか、そしてソンフンの投稿はなぜ「謝罪とは受け取られなかった」のかなど、その背景と構造を整理しました。
目次
ENHYPEN「jap」発言騒動:なにが起きたのか

2025年6月ENHYPENが行ったリスニングパーティーの際、メンバーのソンフンがチャットに「good jap(good jobのスペルミス)」と投稿。
さらにジョンウォン、ヒスンも「jap」「I love my jap」などと書き込み、チャット欄は「jap」の連呼で埋め尽くされる異様な状況となりました。
当初、日本のファンたちは「意図しない間違いだったのでは」と冷静に受け止め、ショックを受けながらも状況を見守る姿勢が多く見られました。
しかしその後、騒動は別の方向へと拡大します。
「good jap」というフレーズが海外ファンを中心にミーム化し、SNSで拡散。中には、侮蔑語であることを理解した上で面白がるような投稿も見られるようになりました。
こうした状況に、徐々に「さすがにひどい」と感じる日本ファンの声が増加。
「結果的にメンバーたちは差別語を使い、それがSNS上で拡散され続けている」という現実に心を痛めたファンたちは、メンバーからの訂正や説明、謝罪を求めるようになります。
一方で、「メンバーは悪くない」「ただのスペルミスを責めるのは酷だ」として、批判の声に反発する動きも。
こうしてファンダム内の空気は急速に変化していきました。
騒動に触れたソンフン
そうした中で、騒動の発端となったソンフンは以下のような投稿を行いました。(原文は韓国語)
リスニングパーティーの時に僕が英語のスペルをうまく書けなかったことが問題になったんですね。あとでスペルが間違っていたと分かって直しましたが、まったく意図はなかったし、ただ間違えていたんです。心配してくれたエンジン(ファンの名称)たち、ありがとう。これからはもっと注意します。
しかし、この投稿がかえって傷ついたファンの孤立感を強め、事態を悪化させることになります。
なお、同じ配信中に「jap」という言葉を使用したジョンウォンやヒスンからは、釈明やコメントは出されていません。
これに対し、「なぜソンフンだけが説明を行い、他のメンバーは沈黙しているのか」といった疑問の声もあがっており、対応の不透明さがさらなる不信感につながっている面もあります。
関連記事
K-POP衣装「JAP表記騒動」徹底解説:日本企業ロゴ使用とJリーグファンの怒り、ENHYPENソンフンの投稿も炎上
謝罪はあったのか?「謝ってない」と感じた理由

ソンフンがWeverseに投稿した文章を読んでみると、「傷ついたファンの存在」そのものが一切登場しないことに気づきます。
- 「英語のスペルを間違えた」 → 悪意が無かった
- 「あとで気づいて修正した」 → ミスに対処した
- 「心配してくれたENGENEに感謝」 → 共感対象の限定
明確な謝罪表現は無く、蔑称が広がっている現状にも触れられていませんでした。
まるで文章の趣旨が「自分を心配してくれたファンへの報告と感謝」であるかのような印象を受けます。
「非謝罪構文」のテンプレート
実はこのような文章は、有名人や政治家の炎上対応でよく見られる典型的なパターンです。
『悪意はなかった』『誤解だった』『深く反省している』といった責任をぼかす表現と、『支えてくれる皆さんに感謝』などのポジティブな言葉を組み合わせて、あたかも謝罪したかのように見せる手法が世界中で定番化しています。
今回のソンフンの投稿も、それに近い構造を持っていたと言えるでしょう。
謝罪風の謝罪が使われる場面では、
- イメージを保つため
- ファンとの関係維持を優先し、早く沈静化を図る
- 忠実な支持層にだけ語りかけることで炎上を局地化させる
などの意図があり、企業や有名人が過敏にならざるを得ないリスク管理の現実が背景にあります。
もちろん、ソンフン本人や所属事務所にそのような意図があったかどうかは不明ですが、そう捉えられても仕方のない構成ではありました。
謝罪じゃなかった理由を推測
なぜ、そのような構成になってしまったのか。以下のような背景があった可能性も考えられます。
ファンダム内の分断に配慮した可能性
すでにファンダムの中では、「謝罪を求めるファン(主に日本ファン)」と「擁護するファン(主に海外・韓国ファン)」という構図がはっきりと浮かび上がっていました。
さらにKPOPにおいては、韓国ファンと日本ファンの間に、文化的な価値観の違いや歴史的な背景からくる緊張感や微妙なライバル意識も存在しています。
こうした下地がある中で、どちらか一方に寄った対応をすれば、もう一方からの反発は避けられないでしょう。
結果として、誰かを特別に守るわけでも、明確な責任を取るわけでもない、そっと触れるだけの投稿という形になったのかもしれません。
パラソーシャルなファン心理への配慮
国やジャンルを問わず、ファンダムには「アイドルを批判する=裏切り行為」と見なして強く攻撃するパラソーシャル的なファンは少なくありません。
こうした過剰に燃える構造を見越して、あえて謝罪を明言しない投稿を選んだ可能性もあります。
もしかするとソンフンは「心配してくれたENGENEたち」という言葉に、ファン全体を含めたつもりだったのかもしれません。
しかし結果として、実際に起きていた事態の深刻さとのバランスを大きく欠いた文章になってしまい炎上が収まることはありませんでした。
「分断」と「言論封鎖」

ソンフンの釈明文が投稿されたことで、ファンダム内の分断はさらに加速しました。
「自分の気持ちが肯定された」と感じて安心したファン、「自分の傷つきが無視された」と感じて失望したファンのように、ソンフンの投稿に「共感できたか、できなかったか」で感情の分断が決定的になってしまいました。
より深刻だったのは、「傷ついた」と声をあげたファンが言論封鎖のような扱いを受けたことでしょう。
傷ついたファンの心理
傷ついた気持ちを表明するファンの多くは、ソンフンが英語を苦手としていることや、発言が打ち間違いや教養の無さ故のものであった可能性について理解を示しているように見えました。
それでもなお謝罪を求める声があがったのは
- 差別語が複数回繰り返され、メンバー間で冗談のような文脈で拡散されたこと
- 海外ファンの間でミーム化・流行語化し、継続的に使われ続けていること
- 今もなおSNS空間にその傷が広がり続けていること
という状況からだと考えられます。
「意図はなかった」の一言で片付けられてしまうことは、ファンの「今も継続して傷ついている」という感覚を無視し放置しているのと同じことです。
「自分の存在」が無かったことにされているような対応に悲しみや憤りを感じてしまうのは、決して過剰な反応ではありません。
過去の謝罪事例との比較
また、過去の炎上対応も比較して話題になりました。
日本人メンバーのニキが、韓国の歴史的な記念日を知らずに「お休みですか?羨ましい」と発言したことがありました。のちに韓国のファンから多数の抗議を受け、ニキ本人が明確な謝罪文を投稿しています。
当然、本人の無知や国籍は免責理由とはされず「不快に思った人がいるなら謝るべきだ」という姿勢が取られました。
それゆえ、過去の対応を知るファンの間からは「同じ事務所なのに、対応に差がありすぎる」といった疑問や不満の声も聞かれました。
意見すら許されない空気
この後、明確な謝罪を求める声に対して、海外ファンを中心に「もう謝ったんだからこれ以上責めるな」「大げさすぎる」といった反論や擁護の声が一気に加速していきました。
特に目立ったのは、大手ファンアカウントが率先して通報や攻撃を呼びかける動きです。
「この人を凍結させよう」「通報お願いします」といった投稿が次々に拡散され、冷静な意見や感想すらアンチとして扱われる異常な状態が発生しました。
「残念です」と静かに投稿するだけで、即座に反論のコメントが殺到する。「謝罪が足りないと思った」と言っただけで、「じゃあファンやめろ」と突き放される。
そんな異論を許さない空気が、次第にファンダム全体を覆っていきます。
そこには建設的な対話や相互理解の余地はなく、「推しを守る」ことが最優先。それに反する声はすべて敵と見なされて排除されるという、強い同調圧力と排他性が存在していたように見えました。
武器になった「good jap」
こうした中で「good jap」という言葉は、当初の意味を知らずに面白がるミームから、日本人ファンを揶揄し、攻撃する武器へと変質していきます。
本来は回避されるべき差別語が、ファンダム内で反逆者へのカウンターとして機能し始めたのです。皮肉なことに「何の意図もなかったはずの言葉」が、実際の差別の意図を伴って再利用されてしまいました。
「傷ついて、それを訴えるとさらに傷つく」そんな二重の痛みが、日本のファンたちを追い詰めていきました。
応援の名のもとに切り捨てられる声

今回の騒動では、差別語の拡散に対して「傷ついた」と表明したファンの声が過剰反応とみなされ「アンチ」とラベリングされ攻撃される事態に発展してしまいました。
こうした反応の背景には、単なる感情の対立を超えて、集団防衛や忠誠心の強化、自己同一化の暴走といった、ファンダム特有の心理構造もあると見られます。
もちろん、すべての擁護派が攻撃的だったわけではありません。「推しを守りたい」という気持ちは、ファンとして自然なものでもあります。
しかしその心理が「異論を排除する仕組み」へと変わってしまったとすれば、ファンビジネスの限界や危うさが露呈したとも言えるでしょう。
騒動は現在も終息しておらず、ファンダムの枠を超えて社会的な問題として注目されつつあります。
今後どのような対応がなされるのか、冷静に見守る必要があるでしょう。