Victoria’s Secretのショー2025の舞台裏を追った映像がYouTubeで公開されました。動画には、ショーへ向けて準備を進める現場の熱気や、ブランドを象徴するウィングへのこだわり、モデルたちが本番に向かう緊張感までが丁寧に映し出されています。
2024年にショーが復活したとき、多くの人が『昔のVictoria’s Secretが戻ってきた』と反応しました。今回の舞台裏映像は、その復活が単なる一時的な演出ではなく、現在のブランドの方向性として続いていることを感じさせる内容になっています。
2025年の舞台裏映像が示したこと

今回の映像で印象的なのは、ただ過去の成功をなぞるのではなく、Victoria’s Secretらしい華やかさや高揚感を残しながら、今の時代に合う形へと磨き直そうとしていることです。
制作陣は、ブランドの象徴であるエンジェルとウィングをあらためて大切なコードとして扱いながら、新しい見せ方を目指しているように見えます。だからこそ、『やっぱりこの世界観が好きだった』という反応につながっているのかもしれません。
Victoria’s Secretはなぜエンジェルを辞めたのか
Victoria’s Secretは2021年、長年ブランドの象徴だった“エンジェル”が歩くショーを終了しました。背景には、従来の美の基準に対する批判や、より多様な女性像を求める空気の高まりがありました。
よく転機として挙げられるのが、2018年に当時の幹部エド・ラゼック氏が、トランスモデルやプラスサイズモデルの起用に否定的な発言をして大きな反発を招いたことです。さらにその後、社内でのミソジニーやハラスメントをめぐる問題も表面化し、ブランドがそれまでのあり方を見直す流れが強まりました。
もちろん、この見直しには意味がありました。長く見過ごされてきた偏りや、体制を見直す機会であったのも事実です。
「正しさ」の空気に息苦しさを感じた人もいた

2018年頃から世界的に多様性やボディポジティブの「正しさ」が強く打ち出されるなかで、華やかさや色気、理想化された女性像に憧れる気持ちは、どこか表に出しづらくなった時期でもありました。
本来、多様性は選択肢を広げるためのもののはず。けれど、それが新しい正義のように機能しすぎたことで、少し息苦しさを感じた人もいたのではないでしょうか。
人は必ずしも「自分に似た誰か」だけを求めるわけではありません。むしろ、自分にはない強さや輝きを持った存在に励まされることもある。Victoria’s Secretのエンジェルたちは、そうした憧れの対象でもありました。
完璧だから遠いのではなく、その堂々とした姿に、自分も少し前を向ける気がした。そう感じていた人にとって、エンジェルたちの存在は「時代遅れの価値観」ではなかったはずです。
だからこそ復活が歓迎された

2024年以降のVictoria’s Secretに『戻ってきた』という声が集まっているのは、単なる懐古ではありませんでした。
歓迎されたのは、Victoria’s Secretがもともと持っていたファンタジーや高揚感、そして女性美を思い切り楽しむ空気そのもの。Victoria’s Secretが強く批判されていた時期、その世界観に憧れていたファンまでも批判されたように感じ、傷ついていた人もいたはずです。
だからこそ今回の復活は『好きだったものを、もう一度好きと言っていいんだ』と思える出来事として受け止められたのではないでしょうか。
これはVictoria’s Secretだけの話ではない
こうした揺り戻しは、Victoria’s Secretだけの話ではありません。近年はほかのブランドでも、多様性を重視する流れを経たうえで、あらためてそのブランドらしい美しさや本来のコードを前に出す動きが見られます。
多様性を大切にすることと、理想化された美しさに心を動かされることは、本来なら両立できるはずです。どちらか一方を否定するのではなく、そのバランスを取り直そうとする動きが、いま起きているのかもしれません。