ルドルフ/ルキーニに挑む、「エリザベート」
そして、風間柚乃さんの実力を揺るがないものとして知らしめたのが、「エリザベート」。
まず、本公演にて主要キャスト・ルドルフ役に大抜擢されましたが、これまでの活躍からして、驚かなかったファンも多いと思います。
月組きってのスター・暁千星さんとの役替りということもあり、それぞれのルドルフの違いも注目されていましたが、2人のスター像の違いも感じる見事な役替り公演になっていると思います。
風間柚乃さんのルドルフは、とても繊細で丁寧な演技が魅力。皇太子として生き、苦悩し、悩む姿がリアルで、革命に挑む強い意志を感じる演技が印象的でした。
そして、新人公演で挑んだのが、全く逆の持ち味のあるルキーニ役。どこか儚げなルドルフとは対照に、狂人ルキーニ役を圧倒的存在感で魅せました。メリハリのあるセリフ、自然でありながら狂気を孕んだ演技は、本公演とも遜色ないほど。
フランツ役の美弥るりかさん休演に伴う代役公演では、新人公演に続いてルキーニ役を演じるという経験も重ねました。
新人公演で演じているといっても、セリフも違いますし、場面も増えますし、フィナーレもあります(1本物の新人公演なので、さまざまな場面がカットされていたり、そのつなぎとしてルキーニが説明ゼリフを担当したりするのです)。
同じ役を演じながら、違う公演に挑戦するような緊張感があったはずです。
その緊張感の中で、確かに狂ったルキーニを演じた姿は、代役公演とは気づかないレベル。全員でフォローしようという月組の団結力も後押しして、大きなピンチを乗り越えました。
そんな経緯で公演された今回のエリザベートは、後に”伝説”と言われること間違いないと思います。
風間柚乃さんの魅力と、これからに期待するもの
出典:©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ タカラヅカ・スカイ・ステージ Talk Variety オシエテ!? #104「風間柚乃」より
風間柚乃さんは、研5とは思えないほど、高い実力を有しています。骨太な男役像は、伝統的な宝塚を感じさせ、これから成長していく姿が楽しみでなりません。
中でも、群を抜いているのが安定した演技力。
タカラジェンヌによっては、突出したスター性により、どの役もそのスター色に染めるという魅力のスターもいますが、風間柚乃さんの場合は、「風間柚乃」が全面にでるというより、その役柄が全面に出るという印象。
高い実力に裏打ちされた、天性の演技力があるのだと思います。
その一方、男役としての居方やスター性は、まだまだ発展途上。役柄を離れて、「風間柚乃」として舞台でどのように魅せていくかには、これから磨きをかけていく必要があるでしょう。
しかし、これは今後ショーなどの経験を重ねることで、どんどん磨きがかかっていくはず。高い演技力に加えて、男役としてのスター性も備わったら、いったいどんなタカラジェンヌになってしまうのか…将来が末恐ろしいです。
特に、今回のエリザベートでは大きな経験をし、男役として一回りも二回りも大きくなったはず。今後、舞台でどのように輝いていくのか、一層楽しみになりました。
これからの風間柚乃さんの活躍から、目が離せない!
出典:©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ タカラヅカ・スカイ・ステージ 音楽の宝箱-宝塚の名曲を歌う-#16より
今回の月組エリザベートは、風間柚乃さんというタカラジェンヌの魅力を強く示したという点でも、ファンの記憶に刻まれそうです。
宝塚の魅力の一つは、スターの誕生と、成長を間近で応援し、感じることができる点にあります。
この点において、一番目が離せない存在は、風間柚乃さんに違いありません!(と、筆者は思っています)
役者としての力はすでに申し分なく、男役としての色気やスターオーラも身につけつつある逸材。
これから公演経験を重ねることで、どのような男役に成長するのか、とても楽しみです。
著者:海野りんご