己龍(きりゅう)は2007年より、「痛絶ノスタルジック」「和製ホラー」という二つのコンセプトを軸に活動しているV系バンドです。
和楽器や読経などとバンドサウンドを融合させた独自の音楽性と、曲の世界観を体現するかのような豪奢なヴィジュアル。
出典:©Natasha,Inc. ナタリー 己龍が次なる新作「無垢」発表、夏の単独巡業「遠塵離垢」は東名阪 より
そして激しいライブが人気を呼び、近年のヴィジュアル系シーンにおいて唯一無二の存在感を放っています。
今回は、数ある己龍の名曲の中から特におすすめしたいものを、かなり迷いながら選び出してみました。
別レ日和ハ仄カニ染マル(わかれびよりはほのかにそまる)
出典:©B.P.RECORDS 己龍「別レ日和ハ仄カニ染マル」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
4thシングル曲。
初期の曲なのですが、己龍の美しく華やかな「和」の部分が強く出ている曲だと感じます。
桜をモチーフに離れ離れになった恋人のことを想う曲で、和楽器の音色を随所に取り入れた雅やかなメロディが印象的。
とても聴きやすく、なおかつ己龍らしさの出た一曲です。
初めて己龍に触れるという方にぜひ聴いていただきたいです。
朔宵(さくよい)
出典:©B.P.RECORDS 己龍 【朔宵】 振付講座 より
作詞・黒崎眞弥 作曲・九条武政
こちらも「別レ日和~」と同じシングル「水無桜」に収録。
発売当時、まだ珍しかった振り付け講座の動画が話題になったのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
早口言葉のようなボーカルに呆気にとられているとサビでは妖しいメロディに惹きつけられ、ジェットコースターに乗っているような印象の曲です。
ライブでは絶えず動きのある曲で、中でも扇子をひらひらさせながら左右にモッシュする箇所が楽しいです。
呪縛愛(じゅばくあい)
作詞・黒崎眞弥 作曲・九条武政
1stアルバム「明鏡止水」収録。
分かりやすい激しさをもってではなく、ひたひたと迫りくるような静かな怖さはまさに和製ホラー。
曲が進んでいくと同時に、眞弥さんの震えるような弱々しい歌い方が感情剥き出しのものになっていくところが聴きどころです。
特に曲中ぼそっと呟かれるある一言は必聴。ゾクッとします。
「歪んだ愛」や「病み」というワードにときめきを感じる方には特に推したい一曲です。
アカイミハジケタ
出典:©B.P.RECORDS 己龍「アカイミハジケタ」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
11thシングル曲。
幼い子どもの初恋のときめきを描いた「赤い実はじけた」という短編小説がタイトルの元になっています。
もし子どもでなく、大人の「赤い実」が弾けてしまったら…?
募らせた思いがやがて狂気となり溢れるさまを、痛々しい歌詞と不協和音が入り混じる演奏で表現しています。
ライブではかなり気持ちよく頭を振れる曲でもあります!
カップリング曲「真紅」はこの曲の前日譚となっています。
真紅の終わりのピアノの音がアカイミハジケタのイントロに繋がっていたりもするので、合わせて聴くとよりいっそう曲の世界に浸れると思います。
暁歌水月(きょうかすいげつ)
出典:©B.P.RECORDS 己龍「暁歌水月」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
4thアルバムの表題曲。
喪服を基調とした衣装で、ひとつ前のアー写が遺影になっている…
そんな衝撃的なヴィジュアルが話題になった今作。
しかしそれにマイナスな意味はなく、むしろ「死ぬまで己龍であり続けたい」という決意をこめたものでした。
曲は作曲者の参輝さん曰く「己龍ポップ」ということで爽やかな印象です。
しかしそれだけではありません。歌詞にはそれまでの楽曲のタイトルや歌詞が散りばめられていたり、生の尺八の音を入れたり……。
「己龍らしさ」や「自分たちの気持ち」を伝えるためにとことんこだわった作品だそうです。
MVにはファンの方たちも出演。曲中手を左右に振るところはライブでも定番となっています。
蹲(つくばい)
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
アルバム「暁歌水月」収録。初回盤のラストを飾る曲で、これでもかというほど重い曲です。
アコギの音と、淡々としたボーカル。
そこに徐々に他の音が加わっていき演奏が盛り上がっていくのですが、それに比例して眞弥さんの歌い方も泣き叫ぶようなものになっていきます。
終盤はほぼ言葉になっていません。これはどん底の状態を表現するため「とにかく叫んでほしい」という参輝さんの要望に応えた結果だそう。
生き方を模索しもがく姿を描いた歌詞がとにかく心に刺さります。
天照(あまてらす)
出典:©B.P.RECORDS 己龍「天照」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
12thシングル曲。
この曲は参輝さんが明治維新以降の時代を舞台にした「曇天に笑う」という漫画にインスピレーションを受け、その世界観を自分の言葉に置き換えて作り上げたもの。
曲の中でもひときわ印象に残る「鈍色模様」というフレーズから、全体を膨らませていったそうです。聴いていてわくわくするような、ドラマチックな展開の曲になっています。
また、歌詞の内容はほぼ同じで言い回しや曲調が違う「アマテラス」という曲も存在します。こちらはまた違う雰囲気なので、ぜひ聴き比べてみてください。
雛奉(ひなまつり)
作詞・黒崎眞弥 作曲・九条武政
前述のシングル「天照」のカップリング曲。
己龍ではお馴染みのグッズ「扇子」を使う曲。
笛の音や童謡の「うれしいひなまつり」を引用している箇所があったりとお祭り感が強く、ライブでも人気があります。
出典:©B.P.RECORDS 己龍「雛奉」振付講座 より
かなり音が詰まった曲で、素人の筆者から見ればもはやボーカルはどこで息継ぎをしているのか心配になるほどです。
曲の内容はとあるひな祭りの起源から。
地域などによりさまざまな説のあるひな祭りの由来ですが、その中でも群を抜いて残酷なものを題材にしています。
その歌詞が複雑な曲と組み合わさり、高揚感と気持ち悪さを同時に持ち合わせた独特の曲になっています。
百鬼夜行(ひゃっきやこう)
出典:©B.P.RECORDS 己龍「百鬼夜行」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
5thアルバムの表題作。
百鬼夜行とは妖怪たちが列をなして歩き回る事を指しますが、この作品ではその名の通りメンバーがそれぞれ妖怪の衣装を身にまとい曲の世界観を徹底的に表現しました。
各メンバーが扮した妖怪はそれぞれ次のとおりです。
黒崎眞弥さん→八咫烏(神の使いだとされる三本足のカラス)
酒井参輝さん→がしゃどくろ(巨大な骸骨)
九条武政さん→蛇
一色日和さん→絡新婦(じょろうぐも)
遠海准司さん→鬼
MVでの多数のお化けにまみれながらの演奏シーンは恐ろしいながらも壮絶でかっこよく、一気に楽曲の世界に引き込まれます!
魑魅魍魎が行き交う百鬼夜行と、生きていくことを重ね合わせたような歌詞にも注目してみてください。
無垢(むく)
出典:©B.P.RECORDS 己龍「無垢」MUSIC VIDEO より
作詞・酒井参輝 作曲・酒井参輝
19枚目にして最新シングル。
「自分と向き合うための曲」であるという今作。
己龍がこれまで何度も表現してきた、「生きる」ということの意味を改めて問いかけるような内容となっています。
通常版Cには、最初の方でご紹介した「朔宵」の再録バージョンも収録されています。
今夏にはこのシングルを引っ提げての東名阪巡業(ライブツアー)「遠塵離垢」と、Resistar Recordsと己龍が所属するB.P.RECORDSの合同ツアー「シバきあい!!」が決定しています。
気になっている方は、ぜひ足を運んでみてください♪
著者:味噌きゅうりちゃん