古川雄大は何次元に存在するのか

2018/08/17
古川雄大は何次元に存在するのか

色っぽさと賢さ フェリぺ

ミュージカル『レディ・ベス』出典:東宝演劇部 公式ツイッター(@toho_stage)より
2014年と2017年に上演されたミュージカル『レディ・ベス』。主人公であるエリザベスの姉であるメアリーと結婚する、スペインの王子様フェリペ殿下をとっても魅力たっぷりに演じていました。

「クールヘッド」というナンバーを生意気そうな声で歌いながら、色っぽい表情で多くの女性と絡む姿がかなり印象的でした。

出典:© Toho Co.,Ltd. 『レディ・ベス』2017プロモーション映像より
「自分は美人のエリザベスと結婚したい!」というような歌詞は、このくらい美しい人でなければ許されない気がしてしまいます。

ただし、それは見た目だけにこだわってそういうことを言ったわけでないということが、後半部分でわかります。フェリペはエリザベスが賢く、政治について正しい考え方をもっていることに気付いているのです。

結局、ベスとは結婚しないのですが、ベスが窮地に立たされたときに助けてあげます。
ミュージカル『レディ・ベス』 古川雄大出典:© Umeda Arts Theater Co.,Ltd. ミュージカル「レディ・ベス」公式HPギャラリーより
表面上は行動や表情のせいでちゃらちゃらしてそうに見えるため物事に真剣に向き合っているのか不安になりますが、知的な面がちらちらと見え隠れするんです。将来、国を背負う立場になる人間なのだと感じさせるような高貴で凛々しい表情をするところが、古川フェリペの特徴だといえます。

苦しむほどに美しさが増す ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

ミュージカル『モーツァルト!』 古川雄大出典:©帝国劇場 ミュージカル『モーツァルト!』公式HPより
2002年に日本初演の幕を開けたウィーンミュージカル『モーツァルト!』。かの有名な天才音楽家の生涯を描いた壮大な舞台です。

古川くんは日本で4人目のモーツァルト役に選ばれました。2018年からは新演出となり、内容はそのままですがより現代要素が強まっており、新しい雰囲気の作品になりました。

出典:© Toho Co.,Ltd. 『モーツァルト!』2018PV【舞台映像Ver.】より
古川モーツァルトは1幕ではとってもお茶目で、基本的にニコニコしています。

よく人と話すときにする、顔をくしゃっと歪める笑い方はいい意味で子どもっぽく、かわいらしいという印象を受けました。

自分の人生を心配する父や、自分のことについてとやかく言ってくる大司教様に向かってもなかなかなやんちゃな態度をとるのですが、その姿までもかわいらしいためついつい許してしまいそうになります。だって、あんまり「くそくらえ!」なんてセリフ、かわいらしいと感じる事って少ないですよね?

ストーリーは決して軽くはないのですが、何をしゃべっても、どんな行動をしてもその笑顔でつい見逃してしまいそうになる雰囲気にほっこりしてしまう瞬間もありました。

ですが、1幕の後半からはどんどん悩みや苦しみが大きくなっていきます。

自分の才能のことや恋人とのこと、家族のことといった問題が山積みになっていくのです。2幕からはかわいらしさは薄まり、代わりに新しいものが濃く出てきました。

それは“美しさ”です。

もちろん元の顔が美しいので、1幕に美しさはなかったのというわけではありません。ここでいうのは、造形の美しさではなく、表情の美しさです。憂いの表情が、古川くんの持つ美しさを最大限に引き出したといえます。何かにもがき、苦しみながらも懸命に生きようとしているという必死さも、その憂いの表情に含まれているのです。つまり、人間が必死になって何かに取り組む姿は美しいということを、多くの問題に悩まされ続けたモーツァルトを演じることで観客に証明してみせてくれたのです。

出典:© Toho Co.,Ltd. 『モーツァルト!』歌唱披露/古川雄大 ♪「僕こそ音楽」より
ラストで、モーツァルトが死ぬ直前に自分のソロ曲「僕こそ音楽」をワンフレーズだけ歌うのですが、そのときの表情は思い出すだけで胸が締め付けられそうになるくらい感慨深いものでした。

この先も出演作が目白押し!

いろいろな時代や次元をいったりきたりし、わたしたちに新しい世界を見せてくれる古川くんの魅力を4つの役柄を通してお伝えしました。

役柄の心情の変化に伴い、表情や感じ取る雰囲気までも変えることができるのが古川くんの大きな特徴だと感じています。

9月からは『マリーアントワネット』でマリーの愛人であるフェルセン役を、来年の2月からは『ロミオ&ジュリエット』でタイトルロールを演じます。

どんどんと出演作が決まっており、また新しい姿の古川くんを知ることができるのが今からとっても楽しみですね!

著者:くるる

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