銀杏BOYZ『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』(前編)
01.日本人
「夕焼け小焼けーにょ」で笑わせにきたかと思いきや、やはり安定の爆音で始まる『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』。
中学生の頃の筆者は2枚のアルバムが同時リリースであることを知らずに、最初は『DOOR』しかレンタルしていませんでした。しかし『DOOR』を聴いて打ちひしがれている時に、もう一枚ペアのアルバムがあるという驚愕の事実を知り、すぐさま某レンタルショップへ急ぎました。「もう何を聴いても驚かないぞ!」という気持ちで聴き始めたものの、もちろん、そんな覚悟は木っ端微塵に砕かれてしまうのでした……。
02.SKOOL KILL
ゴイステの名曲「UNIVERSAL」の癖になるサビの旋律を、銀杏BOYZ風に焼き直した「SKOOL KILL」。これほど露骨なストーカーソングがこれまであったでしょうか?思春期男子たちは「ときめきたいったらありゃしねえ!」と歌い叫ぶことで、抑圧された欲望を解き放ちながら成長していったのでした。
「こんなこと歌っちゃっていいんだ」と変な勘違いをした才能ある中高生諸君が、のちに数々のストーカーソングやメンヘラソングを生み出し、音楽シーンで頭角を現してくることになります。
03.あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す
倒錯した愛に少し驚愕しつつも、純粋すぎる恋心とドラマチックな歌詞に心打たれる名曲。女の子を本気で愛するとはこういうことなのだ、ということを教えてくれる曲です。たぶん。
04.童貞フォーク少年、高円寺にて爆死寸前
DTという言葉もあまり公衆の面前で口にする言葉ではありませんね。歌の歌詞に入れるなんてもってのほか。しかし銀杏BOYZ以降、歌の中でDTを堂々と口にするアーティストは爆発的に増えたように感じます。「あの娘になかなか声をかけられない」「あの娘のことばかり妄想してしまう」というモヤモヤとした気持ちが日常の99%を占める中高生男子にとって、ストレートに口にされるDTの美学は、何よりもすんなり受け入れられたのでしょう。
05.トラッシュ
あまりごちゃごちゃしていないストレートなロックサウンドが銀杏BOYZにとっては珍しい楽曲。
WEEZER、Theピーズ、BUZZCOCKS、Green Day、森高千里、Jellyfish、ザ・スターリン、Pixies、といったバンドや歌手の名前をこの曲で知ったという銀杏ファンは多いはず。
06.なんて悪意に満ちた平和なんだろう
フォーク好きの琴線にも触れる、アコースティックギターとハーモニカと歌のみのシンプルな一曲。峯田和伸さんの弾き語りは、言葉がまっすぐ心に響いてくるので、バンドとはまた違った魅力がありますよね。
07.もしも君が泣くならば
“もしも君が泣くならば僕も泣く”、“もしも君が死ぬならば僕も死ぬ”という衝撃的な恋愛の作法を若者にもたらした名曲。「全身全霊!命がけで女の子を愛する!」ということが正義であると教わった銀杏男子たちは、「ごめん、ちょっと愛が重い」と彼女に告げられ愕然としながらも、一歩一歩謎に満ちた愛の正体を学んでいくのでした。
銀杏バージョン派か、ゴイステバージョン派か、という論争が「銀河鉄道の夜」や「YOU&I」などと共に度々繰り広げられる曲でもあります。